八高線の旅――寄居の街並みと城跡、東武東上線も添えて

残数2の18きっぷを首尾よく手に入れた今回の年越し。
一回分は帰省に使って、もう一回分は…よし、八高線にでも出かけようか。

八王子と高崎、この二つの都市を結ぶから「八高線」。
といっても、両都市を直通する列車はなく、実際の運行系統は途中で分断されており、二つの顔をもつ路線となっています。

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手前の電車は、路線の南半分、八王子から高麗川(こまがわ)を担当。朝夕ラッシュ時には青梅線経由で東京駅まで直通する電車もあり、首都圏の鉄道輸送ネットワークの一端を担っています。

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といっても、東京都を抜け、埼玉県に入った辺りから既に広々とした景色が広がったりする。この辺り、狭山茶の産地なんだそうです。一つ賢くなった。

対して、先ほどの写真の奥に写っているのは、ディーゼルカー。そう、高麗川より北は非電化区間なのです。完璧なローカル線です。列車本数も1時間に1本もない時間帯もあり、関東近郊にしてはかなり少ない部類に入ります。

といっても、電化区間の北端であるこの高麗川駅周辺からして、歩いてみると思った以上に発展していない。駅前の通り沿いに目立つものといえば、埼玉のローカル百貨店らしい「丸広」の2階建てのスーパー、それからウエルシア薬局ぐらい。少し行くとのんびりとした田畑や山々が広がる。

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駅はなかなか可愛い感じなんだけどね。

さて、ディーゼルカーで北上してみます。
八高線が繋ぐのは、関東平野秩父山地の境に立地する町々。基本的にはどこもあまり変わり映えのしない田舎町の風情が広がります。

が、ちょっと面白いのは、寄居。途中下車してみましょうか。

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広大な駅構内。池袋を起点とする東武東上線や、背後に控える秩父の山々に向かって延びる秩父鉄道線が接続しています。
そう、このことからも分かるように、寄居は秩父街道の宿場町、交通の要所として栄えた町でした。

…ある時までは。

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町のメイン通りに繰り出すと、昭和感全開の看板たちが出迎えてくれます。
「お買物、観光は寄居町で」ということですが…

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かつては栄華を誇ったのかもしれない商店街も、今でははシャッター街の段階を飛び越えて、ところどころが駐車場化された歯抜け状態に。

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歴史と伝統のありそうな建物なんかを眺めて楽しむ分にはいいけれど、はて、地方創生!と勇ましい掛け声が響き、少々の補助金がついたところで、最早ここまで中心市街地から商業機能が失われてしまったら活気を取り戻すのは不可能ではないか。
そんな思いが頭をもたけずにはいられないほどの寂れっぷりでした。

ちなみに、メイン通りから見えるところにある大型スーパーは活況のご様子。もう商店街なんて必要としてる人すらいないのだろう…。
池袋からたった90分の土地なんだけどな。

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そんなちょっと寂しい寄居の街ですが、食については侮るなかれ。ふらりと立ち寄った「つばき」という洋食屋が個人的にヒットでした。
まず、店の内装。厨房とカウンター周りのレンガ模様と、畳張りの座敷の融合がザ・昭和でたまらない。長年地元の方に愛されているお店のようで、ちょうど食事しているときもご亭主が出前に行っていました。
そして秩父地方の名物、タレカツ丼が美味しかった!ほどよく甘いタレが病みつきになりそうです。
こういう思いがけない出会いがあるから、自力で調べて練っていく旅もまた面白い…

話を街歩きに戻します。
寄居の中心街を少し南に外れると、大きな川に出ます。荒川です。もちろん、都内を流れているあの川と同じ川。

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都合よく東武線の列車が橋を渡っていきました。
河原の白っぽい岩に石灰岩の気配を感じる。この一帯はセメントの一大生産地でもあります。

そして、川を渡ったところに、この町の見どころがもう一つ。日本百名城の一つである鉢形城跡が整備されていました。戦国時代、北条氏が上野国支配の拠点、また甲州や信州から関東を守るための拠点として活用した城だそうな。

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中世の城ということもあり、当時の遺構こそほとんど何も残っていませんが、「歴史館」で予習した後に城跡を歩くと、地形をどう巧みに生かして城郭を設計したのか分かってなかなか面白いです。
深い谷を削る荒川とその支流、深沢川という天然の要害によって三方向を塞ぎ、残る南西側には二の曲輪、三の曲輪を配して防御力を向上させる、と。お見事。

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三の曲輪からの眺め。またまた都合のよいことに、ちょうど八高線の列車が荒川を渡っていきました。絵になる景色。

寒風吹きすさぶ一日だったけど、ユニ〇ロの極暖のヒートテックのおかげで快適な途中下車が楽しめました。

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さて、再び八高線。寄居を出ると、列車は秩父の山々を後にし、広大な関東平野の北端に踊り出ていきます。

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あのなだらかな裾野は赤城山かな。
倉賀野で高崎線と合流すれば、終点の高崎はすぐそこです。

  *     *

高崎で折り返した帰りは、再び寄居駅に降り立ち、
今度は並行する東武鉄道の各路線を乗り継ぎながら南へと戻っていくことにしました。

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まず、寄居から小川町行の東武東上線普通に乗車。
乗客は各車両に数人程度で、典型的な私鉄のローカル線といった風情。

ところが、再び八高線と合流し、そして池袋に向けて袂を分かつことなる小川町からは様相が変わります。

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小川町駅のホームに待ち受けるのはステンレスの10両編成。すっかり都会風味です。

そしてそんな通勤電車が、素朴な田舎町を離れ、山間を駆け抜けていくのは面白い。関東の私鉄にはあまりない風景のように思います。
が、それも束の間。次の武蔵嵐山駅が近付くと、辺りの景色は一気にベッドタウンの風情に。ここはもう都内への通勤圏さ。

川越市駅まで行って未乗区間乗りつぶし、折り返して坂戸駅から東武越生線へ。
すっかり日も暮れ、辺りは真っ暗ですが、坂戸では意外と多かった乗客が次々と下車していくさまに、越生線沿線もやはりベッドタウンとして開発されていることを察します。

終点の越生駅でみたび八高線と再会。

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有人改札に昔ながらの窓口、駅舎内の木のぬくもり。
池袋から1時間強、720円で来れる地とは思えない光景です。

八高線、「都心にもっとも近いローカル線」かもしれません。ぜひお越しあれ。