紀伊半島 山と海の旅 〔2-2〕サイコパス?なクジラの町・太地

突然ですが、「シー・シェパード」ってありましたよね。捕鯨に対して強硬すぎる反対活動を展開することで話題となった、アレです。
伝統的な食文化か、それとも環境保護かとしばしば論争の種となる捕鯨ですが、そんな捕鯨をめぐる問題の渦中に置かれてきた街が和歌山県にはあります。
それが、今回降り立った「クジラの町」、和歌山県太地町です。ずっと来てみたかったんだよね。

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駅から太地町中心街の方に歩いていくと、さっそくイルカの像がお出迎え。
太地は古来より捕鯨とともに発展してきた町、いまではクジラを全面に押し出した街づくりを展開しています。

…おいおい、イルカなのかクジラなのかはっきりしろって!?
実はここ、重要ポイント。僕も初めて知ったのですが、「捕鯨」と言うときの「鯨」には、いわゆるイルカも含まれているのだそうです。
どうです、クジラならまだ受け入れられるけど、あんなに可愛らしいイルカを殺して食すなんて…!という感覚の方も正直少なくないのでは。でも歴史的に捕鯨の実態はそうなんです。

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続いて、クジラのモニュメントもお出迎え。
どんだけ推すねん、てな勢いで推してきます。

捕鯨を是とするか、非とするか。
僕自身、こういう問題に対しては、あまりはっきりとした意見を持つ方ではありません。悪くいえば日和見的なのかもしれませんが、まずは当事者の立場を知り、学ぶことが先決と思っちゃう。

というわけで、捕鯨文化にできるだけ身をさらすことが今日の責務。
まずは食から。いざ、鯨料理!
専門店「くじら家」さんで「勇魚(いさな)ランチ」2300円。

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まずは気になるお刺身。ミンククジラとイワシクジラ
見た目はマグロ風ですが、それより断然身が締まってる。血の気が多い感じ。健康にな
れそう。

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そして鯨のミートボールだのカツだの。
牛肉ほどには肉々しさや脂っこさがなく、かといって魚ほどあっさりでもなく、コクがあって美味しい…!

あとは、さえずりも美味だったな。
大和煮はご飯と相性抜群。
初のくじら料理だったけど、ああ、これはもっと味わってみたいかも…。
少なくとも、水産庁が言うように、「むしろ生態系的にはミンククジラは捕ったほうがいい」のなら、この味覚を歴史の中に埋もれさせてしまうのは少々勿体無い気がします。

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引き続き歩いていくと、引退した捕鯨船が目に入ります。
一見普通の船だけども…

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こんなゴツい道具でクジラを引き揚げるんだとか。ひええ、デカイんだなあ…。

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その隣にある「くじらの博物館」を見学してみることにします。

「くじらの博物館」は展示ブースと水族館から成っており、中でも展示ブースでは捕鯨文化とクジラの生態を学べるという構成。

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太地は古式捕鯨発祥の地といわれ、捕鯨の歴史は400年前にまで遡るそうです。
船ごとに役割分担しつつ、クジラを追い込み…

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こんな鋭利なモリを投げ、突き刺してクジラを弱らせたんだとか。
なるほど、これでは魚を採るのとは訳が違う。むしろ狩りに近い。大変な大仕事だ…!
実際、明治に入ってからも、夜を徹して行われた捕鯨の末、沖に流された約100人がそのまま嵐に巻き込まれ犠牲になるという大惨事があったといいます。

そして、大背美流れと呼ばれたこの大惨事を契機に古式捕鯨は衰退、代わりにアメリカやノルウェーから近代捕鯨が導入されることになります。
この欧米式の捕鯨の発達史について、博物館の3階で企画展が開かれていましたが、その内容たるや学術論文級の詳しさ。
捕鯨を扱う博物館の底力を垣間見た気がしました。

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近代式捕鯨の時代に入って用いられるようになったのが、こんな形の捕鯨銃。人がモリで突くのではなく、モリを火薬で打ち込んでクジラを仕留めたんですね。

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そして、その現代型がこのいかにもパワフルな捕鯨砲。
こんなものでクジラを捕獲してたとは、考えてみもしなかったなあ…。

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捕ったクジラの利用法に関する紹介コーナーも。
いくら捕鯨文化のある日本で育ったとはいえ、ここまで資源的な観点からクジラを描いた類のものを見るとややギョッとさせられます。
どちらにせよ、ここに紹介されている品物の殆どは今や他のもので代替されていそうな気がする。

あとはこの博物館、結構グロッキーなものも平気で置いてます。動物としてのクジラの生態についてもわりと詳しい紹介があるのですが、骨格標本とかヒゲとかはまだ普通として、性器とか、脳みそとかのホルマリン漬けがそのままどんと。
ほお、こんなに大きいのかと。
きっと誰でも思うよ。

と、来場者にクジラの殺傷方法や解剖後の臓器なんかを一通り印象付けたところで、愛らしく利口なふれんずとしてのくじらさんを見せつけにくるのが、この博物館のサイコパスなところで。

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イルカのショーはもはやどこの水族館でもお馴染みだけど…

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ここではクジラも宙を舞います。
黒っぽいこいつはオキゴンドウ

屋内に小さな水族館もあって、珍しいことに、白いクジラが2匹もいる。

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アルビノバンドウイルカだそうです。
いい表情をしておる…。

太地の町が継承してきた「伝統的水産資源としてのクジラ」と、反捕鯨派が喧伝する「研究すべき知的生物でありヒトのよき友としてのクジラ」、異質な2つの視点を、否応なしただただ同居させ突きつけてくるサイコパス?博物館。
「クジラの町」と称すほど深くクジラと関わってきた立場なのだから、一見両立し得ないこの2つの折り合いをどうつけるのか、もう少し示して欲しかったなあという気持ちはあります。反捕鯨派に対抗していくためにも。
ただまあ、観光地としては、とっても面白かったよ!
行ってみて。

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もう少し時間があるので、コミュニティバス太地町を車窓観光してみます。

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港全景。かつては奥まったあの入江のあたりで、クジラの引揚げが行われていたはずです。

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こんな景色の中で漁をしていたのだろうか。
想像するのはちょっと難しい。

そのまま太地駅に戻ってきました。
今日の行程はあとひと息、本州最南端の町、串本に向かいます。  

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ホームを彩るくじらの絵に見守られながら、16時17分発、紀伊田辺行の各駅停車で太地を後に。

串本には17時前の到着。
この地に降り立つのは3年ぶり。

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お久しぶりです、串本!

☆3月9日にUPしました。